郷土の英雄 No.101

私は、福岡県の北九州市で生まれました。その北九州市の西に遠賀川(おんががわ)と言う九州でも屈指の大きな川があります。その川の上流は、直方、飯塚、嘉穂など過去に炭鉱で栄えた町が連なっており、明治から昭和の前半にかけて、遠賀川を下って多くの石炭が運ばれ、若松港(現在の北九州市若松区)から全国各地に出荷されていました。そんな時代に”ごんぞう”と言う港湾労働者を率いて、利権に群がる輩と対決していったのが、写真の「玉井金五郎」です。この話は、実の息子で芥川賞作家、火野葦平(ひのあしへい)の代表作「花と竜」に実話として載っていますが、当時最下層の肉体労働者だった”ごんぞう”たちのために文字通り体を張って、弱いものを守る、昔の義理と人情を全うした人物で同じ地方の出身である高倉健など、多くの大スターが映画で玉井金五郎を演じました。さて郷土の英雄の話ですが、残念ながら玉井金五郎のことではなく、約一年前の2019年12月4日にアフガニスタンで凶弾に倒れ亡くなった「中村哲」さん、実はこの人は玉井金五郎の孫にあたります。中村哲さんの功績は、ここでくどくどいう必要はないと思いますが、医師として1984年にパキスタンに渡り活動を始めます。その後アフガニスタンに移動してアフガン難民の治療等に従事したものの医者としての職務を全うさせるには、その前にやらないといけないことが山ほどある、特に灌漑で被害に合うと水がないので汚い水でも飲まないといけない、また田畑に作物ができないと結果的に土地を捨てていくので、さらに荒れ果てるし、またテロ組織などに入る人も増える、したがって、根本の原因をつぶさないと医者が医師として患者を診るだけでは、何も解決しない。と考えて医者としての活動の合間を縫って、井戸を掘ったりもしてましたが、最終的に2003年に用水路の建設に取り掛かりました。始めはいろんな苦労や問題がありましたが、等々2010年にクナール川と言う大河から全長25Kmもある用水路を作ってしまいました。そうすると、それまで荒れ果てた不毛の土地だったところが、福岡市の半分の大きさの緑地に生まれ変わり、作物を植え、人も戻り、多くの人の生活が変わりました。見知らぬ外国の見知らぬ人のために人生をかけて尽くす、こんな大きなことを成し遂げた中村さんですが、基本は「困っている人がいたら助ける。」だけであり、最澄の”一隅を照らす”心が基本だと話していたそうです。亡くなって一年経ちますが、本当に残念ですね。でも、亡くなったことがニュースになり、そこで初めて中村さんや彼が所属していた「ペシャワール会」のことを知った人も多く、その人たちがペシャワール会に入会したり寄付をしたり、またペシャワール会だけではなく、ユニセフや国境なき医師団等の救済活動に興味を持ち、応援しようという人が増えたことだと思います。死してまた多くの影響を与える、まさに「郷土の英雄」ですね。中村さんはキリスト教徒で内村鑑三の本などもたくさん海外に持って行って、若い人たちに薦めていたそうですが、その内村鑑三の言葉には、弱いものを助けるために「誰も行きたがらないところへ行け。」とあります。中村さんは、生涯かけて、そのことを実践していたようです。形は違いますが、気持ちは、祖父玉井金五郎と同じようにそこに弱い者がいるから助けていただけ、だろうと思います。そのことを表すかのように、自分は困っている人がいたら手を差し伸べるだけ、今やっていることはただの”水やり”、

褒められてもくさされても、誰が去ってもだれが倒れても、邪魔されても協力されても、誰が何といおうと”ただの水やり”をしている。と記者にこたえています。そして、同じく内村鑑三は、後に続く人たちに何を残すか、金でも事業でも思想でも良いが、最大の遺産は「勇気ある生涯」である。と言ってますが、中村さんはその通りに生涯かけて実践して見せてくれました。こんな人がいたというだけで、たまたま同じ出身地であることに誇りを持ってしまいます。世の中に英雄はたくさんいますが、本当の英雄と言うのは、一代で大きな富を築いた人や日本のリーダーになって活躍した人、何かの組織の頂点を極めた人などではなく、目立たなくても生涯かけて弱い人たちを助けた、この中村哲さんのような人を言うのではないかと思います。本当に惜しい人を亡くしました。

さて、話は変わりますが、今年の6月、中村さんの功績に感動した人が火星と木星の間にある直径6Kmくらいの小惑星に「nakamuratetsu」と命名しました。この小惑星は肉眼では見えないらしいですが、地球と同じ太陽を回る惑星です。中村さんの座右の銘は「一隅を照らす。」ですが、正に中村さん自身が星になり一隅を照らす存在になったのかな、と思います。

改めてご冥福をお祈りします。

 

今年もあと2回のブログで終わります。

忘年会もなくなり、ちょっと寂しいですが、

みなさん元気に乗り切りましょう!

次回は、12月20日ころです。

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