野望の終焉 No.146

北フランス、ドーバー海峡に面した港町リール、海辺の人通りのないベンチに二人の老紳士が座っている。その後ろから、気配を全く感じさせず近づく東洋系のがっちりした男。男「振り向かずに話せ。」紳士「お~お、来てくれましたか、Mr東郷。」男(以下G)「世界を牛耳るロスチャイルドとロックフェラー(注:1)の総帥が揃って、俺に何の用か。」紳士A「ご存じの通り、ロシアの狂犬が牙をむき、世界は混乱の一途をたどっています。我々ロスチャイルド家にとってもイングランド銀行、パリ国立銀行、香港上海銀行、ゴールドマンサックスなどの金融だけでなく、ロイヤルダッチシェル等のエネルギー企業、またネスレ、コカ・コーラ、ユニリーバ、ロッキード等々、世界各国の関連企業の価値が大きく棄損しつつあります。」紳士B「我々ロックフェラーにとっても同様にメリルリンチ、シティバンク、エクソンモービル、ボーイング等々、このままの状態が続けば、存続すら危ぶまれる企業も出てきます。」G「それは、お前たち西側諸国が決定したロシアに対する制裁措置の反動で、初めから想定されてたことじゃないのか。」紳士A「その通りです。ただ、一つ誤算があったのは、プーチンはじめロシア側が思った以上に耐えれており、手をあげないことです。」紳士B「その理由のひとつは、プーチンはじめ、それを経済的に援助しているオリガルヒ(プーチン政権を支えている新興経済財閥)たちの海外資産に関して、凍結はしたのですが、実は世界のロスチャイルド、ロックフェラー系金融機関には、第三者の名義やロシアに近い国の架空名義で、過去に石油や天然ガスで蓄えた多額の資産が眠っているのです。」紳士A「その額は我々の試算では、ロシアの国家予算に匹敵するくらいの額であることが分かっています。それさえあれば、ロシアはびくともしないのです。」紳士B「それら世界の隠し資産を金、ドル、ユーロに変え、2022年3月20日に香港に集結させることがイスラエルのモサド(注:2)の情報でわかりました。さらにその後、中国船籍の偽装貨物船で極東ウラジオストックに運び、ロシア国内に移送する計画です。それがプーチン側に渡ると、ロシアより先に西側諸国の方が手を上げざるを得ない状態になり、ロシアの進攻は隣国のポーランド、バルト3国に留まらず、フィンランド、スウェーデン等、あっという間にヨーロッパの半分がロシアのものになってしまいます。」G「そこまでは分かったが、俺にどうしろと言うのだ。」紳士A「その船には、オリガルヒの中で最もプーチンが信頼をするロシア最大の石油会社ロスネフチのCEO、イーゴリー・セーチンが乗船することも分かっています。その船を事故に見せかけて海中深く沈めてもらいたいのです。」紳士B「条件はもう二つあります。場所は貨物船の航路にあたる日本近郊の太平洋側でお願いしたい。そこには深さ7000mの日本海溝があり、一旦沈んだあとロシアが引き上げようにも無理であること。もう一つは、イーゴリー・セーチン以外の人命は奪わないこと。」紳士A「これを頼めるのは、Mr東郷、あなたしかありません。」G「そんな回りくどいことをせず、なぜ、プーチン自身を殺らないのか?」紳士B「それも考えましたが、ロシア政府にはプーチンと志を同じくする狂犬が他にもいます。もし、プーチンが暗殺されたとなれば、逆に結束が強まり、プーチンの敵討ちとばかりにやけを起こして、それこそ核のボタンを押す可能性が高まります。また、その後ろ盾になる資金はそのままロシアに渡ってしまいます。したがって、プーチンに最も影響を与える人物セーチンを消し、後ろ盾になる資産を消滅させれば、さすがのプーチンとて、この戦争は続けられなくなるはずです。世界を救うために我々が考えたシナリオは、これだけなのです。世界を助けると思って、引き受けてはもらえないでしょうか?」Gしばらく沈黙「世界を助けるのではなく、自分たちのためじゃないのか?」紳士AB「・・・・・。」G「よかろう、引き受けよう。」紳士AB「お~お、神様、これで世界は救われた。」

数日後、日本の新聞に比較的小さな扱いで「中国船籍の中型貨物船、岩手沖で沈没、乗組員は全員無事」との記事があり、近くで目撃した海上保安庁の乗組員によると、「荷物は積んでないようだったが喫水線(船と海面の交わる線)が異常に甲板に近いようだった、船倉に何かとてつもなく重いものでも入れていたようだ。」(注:3)とのコメントがあった。また、他の海上保安庁の職員の言葉として、「沈没しそうだとの一報があり、4時間かけて駆け付けたが、沈みだしたのは到着のつい30分ほど前だったようで名簿にある乗員は全員救助できた。不思議なこともあるものだ。」と発言していた。そして、その事故と同時に何者かから他のオリガルヒメンバー全員に一通のダイレクトメールが・・・。内容は「次に讃美歌13番(注:4)が鳴るかどうかは、お前次第だ。」それから比較的早い時期にプーチンから和平の話が出てきた。それを西側諸国のマスコミは、自由主義の勝利と称えていた。場所は変わり、フランスボルドー川河畔の静かなオープンカフェでロシア撤退の新聞記事を見ながら、赤ワインで乾杯する二人の老紳士、「ムートンロートシルトもラフィットロートシルト(注:5)も一番のつまみは、平和という事だな。」

・・・・・・野望の終焉 完・・・・・

 

注1:ロスチャイルドはドイツ発祥のユダヤ系財閥、ロックフェラーはアメリカ基盤の世界的財閥、双方とも世界中の多くの企業に影響力を持ち、普通はライバルとして競い合っている。文中の企業はそのほんの一部である。

注2:モサドはイスラエルの諜報機関で世界中に張り巡らせた情報網はCIAも一目置くと言われる。

注3:喫水線が甲板に近いという事は、金か何か重量のとても重いものを積んでた証拠

注4:讃美歌13番とは、ゴルゴ13と接触するときの暗号、イゴール・セーチンの死と自分たちの資産が沈んだのは、ゴルゴ13の仕業だと理解したオリガルヒたちは、戦争を続けるための資金がなくなったことに加え、次の標的が自分と知って、命がけでプーチンを止めにかかったと思われる。

 注5:フランス5大シャトーのなかのムートン・ロートシルトとラフィット・ロートシルトは、ロスチャイルドの持ち物。(ロスチャイルドをドイツ語読みするとロートシルトになる。)

 

(あとがき)

この物語は、私が考えた完全なるフィクションです。

もし、ゴルゴ13なら、こんな感じでプーチンの野望を終わらせるのかなと勝手に考えてみました。

ゴルゴ13を読んだことある人は、ありそうなストーリーだと感じてもらえると思いますが、知らない人には少し難しかったかもしれません。家にゴルゴの単行本が100冊以上ある私としては、是非ゴルゴに登場してもらいたいとの願望を含めて書きました。でも、現実は、もっと複雑怪奇で簡単には解決しないでしょう。極東の果ての一市民としては、一刻も早い終結(平和)を祈るばかりです。

 

次には、明るい話題でブログを書きたいものです。次回は、20日前後です。

 

 

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