安全神話崩壊 No.153

先月23日に大変悲惨な事故が起こりました。5月17日現在でも12名の方が不明です。また、報道によると事故は起こるべくして起こった人災と言えるようです。私が中国やアジアに行き始めた30数年前は、各国の方には失礼ですが乗り物に乗る時はいつも不安でした。車が途中で故障して止まったり、ハンドル操作を間違ってぶつかりはしないか、船は沈むんじゃないか、飛行機は、この間まで戦闘機を操縦していた兵隊上がりのパイロットも多いと聞き、乗るたびに急上昇急降下で不安に思いました。上海の市内から空港までのリニアモーターカーができて時速300Km で走ると聞いた時にも同行の日本人の中には、絶対事故が起こるから乗らない、という人までいたくらいに安全に対しては不安が付きものでした。それは、単なるイメージでそう思うのではなく、実際に町の中では車がよく事故をしており、また高速道路が壊れて高架が落ちたり、橋が壊れたり、大きな列車の事故もあったり 、乗り物自体だけでなくインフラも含めて現実に事故率が高かったのも事実でした。それは、どこかで”手を抜いている”のが原因で、そのいい加減さがいろんなところで不安にさせていました。その点、日本はどこに行っても何に乗っても手を抜くことがないので、安全で何の心配も要らない、・・・・と思っていましたが、この間の遊覧船の事故を見ると、「日本も変わってしまったな。」と考えを改めざるを得ません。命に係わる危険よりも金儲けを優先する遊覧船社長の考え、それを許してしまう周りのスタッフ、中途半端な検査で通してしまう国の検査方法、どれを見ても”日本らしさ”が一かけらもありません。日本には西洋のように宗教に基づいた道徳教育はありませんが、昔から武士道と言う道徳観を共有し、それが日本人の素晴らしい道徳観を醸成してきたと言えます。だから、「自分だけ良ければ、周りはどうなっても良い。」という間違った個人主義や「金儲けが全て」と言った”さもしい”考えは、それを考えるだけでも不道徳であり、また、正しい事のために命を懸ける覚悟(正義の観念)というものが知らず知らずのうちにバックボーンとして心の中にあったはずです。日本が誇れる美しさとは、野山や海などの自然ではなく、整然とした街並みや美しい料理などでもない、世のため人のために生き、勤勉で、正しいことを整然と遂行する心の在り方だと思います。その美しい日本人の心が失われている証拠が今回の事故のように思います。手抜きをせず、見えないところこそ一生懸命に責任を持って遂行する、そのような日本の良いところが失われつつあるのです。全く持って悲しいことです。しかし、そんなことばかり言ってもこのような事故は減りません。もちろん、今回の社長はじめ、国やその他の関係者のような無責任な人間を無くすために、道徳を教えるのは大事ですので、やらなければならないと思いますが、それまで手をこまねいているだけでなく、やることもありそうです。例えば、事故などが起こる時には必ず兆候があり、1件の重大事故の前には29件の軽微な事故があり、その前には300くらいの”ヒヤリ”としたり”ハッと”したりする、事故にならないが一歩手前の事例が起こると言われています。(ハインリッヒの法則)そして、今の国の管理方法は重大な事故が起こって初めて営業停止等の執行をするわけですが、その前の軽微な事故では注意等で済んでいる例が多いように思います。つまり、大きな事故になって初めて実損が出る。それまでは、損が出ないので「ハイ、ハイ」と言うだけで、お金をかけて事故防止をしなくてもすんでしまう。という事になります。そうではなく、人の命に係わるものやことに対しては、軽微な事故が起こった時に運営者には実損が伴う処置をするなど、軽微な事故でも起こしたら損をするという事を理解させることが大事だと思います。また、国の検査もいい加減なもので、何か不足していても「今度直しといてね。」みたいな感じでその場を済ますなど、有名無実な検査方法も分かってきました。その際にも実損が伴う罰則を強化して、軽微な事故でも検査時の不備でも起これば大損するとなると、軽微な事故も検査の不合格も起こせません。そのためには、ヒヤリやハッとしたときには、何としても軽微な事故にならないようにと工夫や注意が生まれ、またお金をかけても対策を取るはずです。そうなれば、大きな事故につながる可能性が大きく減ってくるのではないでしょうか? もちろん、各業者にとっては痛いことだし、利用者にとっても大きな不便です。しかし、命を救うための我慢であれば、納得するのではないでしょうか? 今回の事故も時間とともに人々の記憶から消えていき、結局何も変わらず、また数年後に違うところで同様の人災事故となって現れたとしたら、今回犠牲になった人は浮かばれません。尊い犠牲を活かすためにも国の検査の仕方、罰則の在り方、そして長い目で見て日本人の道徳心の醸成に取り組んでほしいものです。

 

(あとがき)

何年か前に知床近辺で7月に船で観光したことがありました。7月と言うのに寒い事、寒い事、長袖でも寒くてぶるぶる震えていたのを思い出します。その時にも救命胴衣はつけていましたが、海に入ったらさぞ冷たいやろうなあ、と思ったものです。その時よりも5月の海は寒いだろうと思います。いまだ不明の方たちが一日でも早く発見されることを祈ります。

 

 

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