新吾のステーキ (No.3)

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よくある話かもしれませんが、若いころのあこがれが、その後の人生において、励みになることがあります。
私の場合、祇園にある新吾のステーキがそうでした。
今から40年近く前、まだ20代の前半のころ、ニッセンの創業者である川島達三社長(当時)に

初めて連れて行ってもらいました。
バターを焦がした良い香りと共に出てきたステーキにナイフを入れると中は赤いレア、

一切れ口に入れると、今まで食べていた肉は何だったんだろうと思うくらい、

柔らかくモチっとした感覚、これまでに食べた全ての食べ物の中で一番おいしい!と感激しました。
食べ終わると川島社長は、きりっとした若い主人に「マスターまたな、しっかり頑張りや。」と

片手を上げて店を出て行きます。

後で聞いたのですが、おいしいだけあってなかなか庶民が行ける値段ではありません。

確か一人前が当時の私の給料の3分の1くらいの値段でした。
その時、素直に「こんな店でステーキを食べれる川島社長はすごい!」と尊敬しました。
それから、私には一つの目標ができました。
「いつか、自分のお金でこんな店に来れるようになりたい!」

それから、20年くらい経ったでしょうか、40代の前半くらいになって
何人かの若手を連れてプライベートで行く機会がありました。
お肉のおいしさだけでなく、自腹で新吾に来れたんだ!と言ううれしさは、それはそれは、また格別なものがありました。

それ以来、何度となく行く機会がありますが、いまだにステーキは新吾が一番と確信しています。

まあ考えてみれば、新吾に行けるようになりたい!と言う思いが自分のモチベーションになって今があるので

新吾には感謝をしないといけません。

たかが食べ物くらいで大げさな、と思う方もおられるでしょうが、

意外とこんなことがやる気と励みにつながるものだと思います。

 

最初に行った時は若かったマスターも70前後になりましたが、今でも必ずマスターが自分で肉を焼いて出してくれます。

そして、ある時一つ気が付きました。

今までマスターに「焼き加減」とか「肉の大きさ何グラムにする?」とか聞かれたことがありません。

一度、マスターに「俺、今まで焼き加減とか肉の大きさとか聞かれたことないなあ?」と言うと、

「顔を見たらどのくらい食べたいかわかる。」

「焼き加減なんて一番おいしく焼いて出してるんやから、いろいろ言わんでもよろしい!」

とのこと、「う~ん、なるほど。」

私も今年63歳、当時の川島社長よりもずいぶん年を取りました。

でもマスターが頑張っている限り、これからも新吾には行きたいと思います。

ただ、一つ残念なのは、今までに何人もの若手や後輩を連れて行ったのですが、

その後プライベートで来てる人は、一人いるかいないか、らしいです。

ちょっと寂しいね。

これを読んだ人は、一度新吾に行ってステーキを食べて、

家族のお土産にカツサンドを持って帰ってください。

元気とやる気が出ることは保証します。

その代わり財布は少し軽くなるかもしれませんが・・・・・。

(ちなみにカツサンドは常連さんへのサービスで安くしてくれているらしいのですが、

 お値段は、ひとつ税込6480円です。)

 

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