人類の知恵 No.118

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最近、ニュース等で流される海外の様子を見ると、コロナのせいで握手をする姿をほとんど見かけなくなりました。

当たり前のように見ていた握手がないことに違和感を覚えながら、ふと「握手ってどうしてするようになったのか?」起源を調べてみると、基本は武器を持っていませんよ、と言う意思表示から始まったそうです。右手(利き手)を差し出し、お互いが握って、さらに手を振り合う事で袖にも武器がない事を証明する。日本のお辞儀も基本的には、握手と一緒で相手の前に首を差し出して敵意がありません。という事を示す意味で始まったようです。また、警察や消防、軍隊等で行われる挨拶に敬礼がありますが、その起源も同じような意味で、昔の騎士が鎧に身を包んでいると誰か分からないので、兜の面を上げて自分が誰かを明確にし「敵意はありません。」と示したのが始まりとされています。昔は今と違って、物騒だったでしょうから、いつ誰に襲われるかもしれない、だからまずは敵意がない事を示して初めて、話し合いなりが行われるわけですね。それは、食べるときの作法にも表れていて、特に中華料理は、大皿で出てきて、それをみんなで取り分けて食べるのが普通ですが、それは毒が入ってないことを証明するために生まれた食べ方で、そのくらい中国では相手を信用しない時代が長かったという事でしょうね。

相手を信用しないという意味では、日本の正座も近いところがあります。時代劇で殿様の前で家臣たちが正座をしている風景がありますが、徳川三代将軍家光のころまでは、正座はほとんどしなかったそうです。胡坐を組んだりするのが普通でしたが、徳川幕府の初期にはまだまだ戦国の気風が残っており、一つの部屋に集まった中には自分(将軍)を殺そうとする輩がいないとも限らない、そこで将軍に対峙するときには、膝を曲げて座る、つまり今の正座で座ることを強要したらしいです。そうすると、座ってる方は足がしびれるし、窮屈な態勢なので自由に体を動かせず、殿様は安心できるわけですね。正座と言う言葉も明治時代につけられた言い方で、それまでは今の正座は危座(きざ)と言って罪人などが座る座り方でした。さすがに危座では印象が悪いので正座と名前を変え、教育などにも取り入れて行ったので、正座=正しい座り方=きちんとしている。と定着しました。

このように挨拶や礼儀と言うのは、単に儀礼としての形ができたのではなく、人と人が気軽に接することできない危険な時代にそれでも人に会わないといけない、人と話さないといけない場面で、相手に示さないといけない最低限の誠意だったのだと思います。したがって、それをしなければ相手は自分の敵と思い攻撃を仕掛けられても仕方ないわけですね。したがって、長い歴史の中で培われた挨拶や礼儀は、それをするだけで相手の懐に飛び込む(面と向かって会える、話ができる。)ことができる、”人類の知恵”のようなものだと言えます。そんな長い歴史によって作られた知恵もコロナの影響でする機会が減りました。人に会わなくなったので握手もお辞儀もする機会が減り、もちろん大皿で大人数での会食やお酒を注いで、その杯を飲み干して返杯、差しつ差されつ口角泡を飛ばすような議論もなし、コロナで変わった世の中においては、無理に握手をしようとすると、敵意がない事を示す握手が逆に敵意があるかのように取られ、相手から何らかの攻撃をされないとも限りません。嫌な世の中になったものです。

昨年は11年ぶりに自殺者が増え、うつ病や失業による引きこもりが急増と、いい話はほとんど聞きませんが、コロナに負ける訳には行きません。コロナに負けない、とは何かというと、希望を持つという事だと思います。余ったワクチンは、すぐに代わりの人が接種できるように登録するソフトを作り効果を発揮している山梨県の話や県と医師会の協力のもとワクチン接種が素早く行われている和歌山県など、各地で知恵を出し合って未曽有の困難に立ち向かおうとしています。また、日本製ワクチンの開発や日本の学者によりコロナ特効薬の兆しが見えた、などなど、ちょとずつではありますが希望が見えてきたようです。あと半年もすれば、思い切り人に会って、握手して、語り合って、飲み食いし、やっぱり人と接することっていいなあ、と思えるようになりそうな気がします。挨拶や礼儀が平時における”人類の知恵”なら、「苦しい時でも未来への希望を持つことで頑張れる。」事は非常時における”人類の知恵”と言えるでしょう。ぜひとも科学などの知恵だけでなく希望と言う知恵も活かして、乗り切っていきたいものですね。

 

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