温故知新 No.155

6月10日、時の記念日にあたり、少し昔を振り返ってみようと思います。と言うのも、今週7日に東京ビッグサイトでダイレクトマーケティング(以下DM)フェアと言う展示会があり、その中で講演を依頼され話をしてきました。DMと言うと何かなと思う人もいるでしょうが、いわゆる通信販売のことです。会場は出展者も来場者も若い人がたくさんでDM業界に従事している人の多さを感じました。通販と言うと、今でこそ、テレビやWEBなどが主媒体になってきましたが、元々は紙媒体が主流で欧米では100年以上前からすでに普及していた販売手段です。写真のカタログは、フランスの友人からもらった1924年と1925年に発行されたフランスの通販カタログです。(プランタンとボンマルシェのカタログ)100年前ですから写真はまだまだ一般的ではなかったので、絵で商品を説明しています。当時の最新ファッションや靴バック、アクセサリー、家具や台所用品など、今と変わらぬ品ぞろえで驚きます。ところが日本では、なかなか業界が成熟せず、私が大学を卒業してニッセンに入った1978年頃の”通販”と言う響きの中には、少々暗い印象がありました。その当時の通販会社は玉石混交で、中には胡散臭い商品やまがい物を売る会社もあり、私が九州から京都の通販会社に行くと言うと、本気で「大丈夫か?」と言う人もいたほどです。会社に入ってからも商品の仕入れをしていたのですが、いろんなメーカーさんや問屋さんに「商品を仕入れたい。」と連絡しても「カタログ販売?」「何やそれ?」「写真で物を売るなんて聞いたことがない!」とよく断られました。実際、友人や周りの人に通信販売のニッセンって知ってると聞いてもほとんどが、「通販?ニッセン?知らない。」と言う返事。唯一「知ってるよ。」と言ってくれてたのが飲み屋のおかみさんやお姐さんたちでした。当時のニッセンは美容院にカタログを置いていたので、しょっちゅう美容院に行く必要のある飲み屋関係の人たちにのみ知名度があったわけです。それが今やカタログやチラシだけでなく、Eコマース、テレビショッピングなどは当たり前で知らない人はほとんどいません。隔世の感があります。隔世の感と言うと、仕事の仕方も様変わりです。当時は、今のようにパソコンもないしインターネットもスマホも何もない時代でしたので、計画などを立てる時や業績の判断をするのに全部手計算、かろうじて電卓はありましたので、月別商品別の売上計画などを作る際には、電卓片手に一晩は平気で徹夜しないとできないくらいでした。今ならエクセルで10分くらいでしょうか。また、何かの連絡をするには大勢であればその都度、みんなで集合して話を聞かないと伝えられません。今なら、メールで同時配信すれば、何人でも何百人でもあっという間です。また、何かを調べるには、会社にある百科事典や統計資料から探し、なければ図書館や新たにそれがわかる本を購入するなど、手間がかかって仕方ありませんでしたが、今はネットで検索すればあっという間です。最近ではコロナの影響もあり商談や会議さえもリモートで済ませられます。新幹線の所要時間も当時は京都→東京間で3時間弱かかっていたものが今では2時間10分前後です。この40分の短縮は結構大きくて、入社当時に東京に行く際は、午前中が移動だけなので必ず1泊2日で行ってましたが、2時間10分で行けるとその日の午前中に商談ができるので、昼から3軒ほど予定を入れると日帰りができるようになりました。その他、携帯電話が普及して、どこでも連絡が付きますし、新幹線の中でパソコンを開いて仕事をしている人も大勢います。これだけ多くの時間を短縮できるようになって、普通に考えれば当時の仕事は今なら半分か3分の1の時間で充分にできるようになったはずです。では、一人当たりの生産性が当時の倍~3倍になっているか? 多分、そんな実感はないと思います。なぜなら、一番違うのが”要らん仕事が多すぎる”からです。なまじエクセルが使える、依頼すれば資料が出てくる、ネットを見れば大体の欲しい情報が見れる、そうなると、情報も多すぎて細かい分析もできるので情報や機械に振り回されてしまっているように思います。ポイントさえ逃さなければ細かいことは不要なケースは多々見られます。飲み会で店を探そうと昼間に「今日の宴会何人くらい来るの?」と聞かれて、来る可能性のある人にいちいち確認し、その精度まで計算し、「80~100%の人が7人、50~80%の人が2人、それ以下が3人、加重平均すると8.5人です。」と夕方になって返事されても役に立たないと思います。それなら、「今、12人に声かけてますけど、来れない人もいるようなので10人弱だと思います。」と即答した方が役に立ちます。そんな人はいないだろうと思うかもしれませんが、こんなケース、周りを見まわしたら結構あると思いますよ。今、何が大事か、優先順位を付けられない人は、総じて仕事ができない人だと思います。逆に優先順位が付けられることは、仕事のできる人の条件でさえあります。

さて、皆さんも”時の記念日”に昔と比べて自らの時間の使い方が進歩したか、温故知新、一度考えてみるのも良いのではないでしょうか?

 

(あとがき)

時の記念日は、天智天皇が日本で初めて水時計で時を知らせた故事から取ったものですが、制定されたのは1920年(大正9年)です。制定の理由は欧米人から、日本の一般人は時計も持っていないことから「日本人は時の観念が薄い。」と指摘されてのことだそうですが、一般の人への腕時計等の普及は第二次世界大戦後1950年頃を待つことになります。考えてみたら、1920年ころからフランスでは通販があり、カタログには今と変わらない腕時計や懐中時計が売っています。欧米と日本の工業化の歴史はやはり大きく異なるなと実感する次第です。では、次は6月20日あたりの更新です。

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