勝てば官軍 No.175

先日、久しぶりにレンタルビデオ屋さんに行きました。家でアマゾンプライムなどを見てると、わざわざ借りに行く必要もなく、考えたら3年ぶりの訪問でした。特に面白そうなものもなく適当に借りて帰ったのですが、その内の一枚は「峠 最後のサムライ」と言うタイトルで幕末の越後の小藩である長岡藩の家老、河井継之助が薩長の官軍といかに戦ったかを映画にしたものでした。この映画だけでなく、その前に見た「燃えよ剣」という新選組の土方歳三を主人公にした映画も同じですが、それぞれ主人公が幕府側の人間ですので、滅びゆく徳川幕府から見ると官軍の横暴さやそこまでやらないといけなかったのか、という容赦のなさが目につき、どちらに”義”があったのだろうかと疑問を抱いてしまいます。私達が生まれてから、ずっと長い間教えられてきたのは、明治維新により日本の近代化が進み、欧米列国と肩を並べることができたので、維新の推進者たち(薩長などの志士)は、正しくて、旧態依然として改革をなさなかった旧幕府側は国にとって弊害であり、敗れて当然だ。と言うことであったように思います。例えば、幕末の主人公と言うと西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、坂本龍馬、高杉晋作・・・・と維新側では、たくさんの英雄が出てきますが、幕府側では、せいぜい勝海舟くらいしか出てきません。それは、写真の「錦の御旗」を掲げて戦った官軍が薩長を中心とした維新軍で官軍に対する賊軍が幕府側だったせいもあると思います。つまり、天皇を象徴とした現国家体制の基礎を作ったのが明治の維新軍だったので、そちらを正しいとせざるを得なかったのでしょう。徳川家康などの評価についても戦前は、「狸おやじ」「腹黒い」などと決して評価は高くなかったようです。何が言いたいかと言うと、「勝てば官軍、負ければ賊軍」と言う基本ルールで歴史は創作されている、という事なのです。常に勝った側から歴史を編纂するので、負けた側が悪者になるのです。維新の志士たちは英傑ぞろいだが、徳川幕府の官吏たちは無能で外国に対しておろおろするだけ、そのトップの徳川慶喜は「軟弱であり、戦わずして政権を放り出した無責任な人間」と、まあ、こんな感じで明治政府はキャンペーンをしていたようです。しかし、当時の日本を取り巻く外国との関係は、ペリー来航のアメリカだけでなく、薩摩側にはイギリスが、幕府側にはフランスが付き、さらには日本と古い付き合いのオランダ、それからロシアも1861年には対馬を占拠し、虎視眈々と日本を自分の領土にしようと狙っていました。もし、徳川慶喜がフランスと組んで最後まで戦う姿勢を貫いたら、日本は東西に割れて別の国になったかもしれませんし、また、そのどさくさに紛れてロシアが北海道辺りを自分の領土にしたかもしれません。そうならなかったのは、慶喜の英断と言えるのではないでしょうか? そう考えると西郷よりも大久保よりも竜馬よりも慶喜の方が日本にとって重要な役割を果たしたのかも知れません。また、当時幕府勘定奉行だった小栗上野介は、アメリカ視察の後、日本で最初の造船所を作り、近代化がいかに大事かを説いていました。ちょんまげ時代からたった37年しか経っていないのに日本がロシアに勝ったのは、この造船所があったからだと言われています。それだけ旧幕府側にも優秀な人間がいたという事なのです。歴史の中で勝った方だけに正義があり優秀で、負けた方には正義はなく、凡人ぞろいなどという事は無いはずです。どちらにも正義があり、その時々に全力で戦ったが、ほんの少しの運や力の差で勝敗が決まり、そのとたんに100対0の評価になってしまう、と言うのが事実だと思います。そう考えると、たまには歴史だけでなく通説とか常識と言われることを疑ってみるのも面白いのではないでしょうか。

(あとがき)

文中出てきた小栗上野介は、明治維新と同時に維新軍に無実の罪を着せられて処刑されてしまいます。しかし、日露戦争後に日本海海戦を制した東郷平八郎は、「勝ったのは小栗殿が作られた横須賀造船所があったからである。」と、賊軍の代表である小栗の子孫に対して、「仁、義、礼、智、信」と言う書をしたためて記念に贈り、心からの感謝を表したそうです。また、造船所を作るときに幕府の財政はひっ迫しており、大反対がありました。それを目の前にして小栗は、「幕府の運命に限りがあっても日本の運命に限りは無い!」と言って周りを説き伏せたそうです。そんな人が賊軍のわけがないですよね。惜しいですね。

では、次回は11月末頃に更新します。

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