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みなさん、グラミン銀行ってご存じですか?バングラデッシュの貧しい農村の女性たちに少額の融資を低金利で行い、それまで高利貸しなどで苦しめられていた貧困層の人たちを救った、そして単にお金を貸しただけでなく自ら起業したい人たちのサポートをし、2006年にノーベル平和賞を受賞した企業です。
その創設者が写真のムハマド・ユヌス氏です。最近、この人の記事を読んだのですが、なかなか興味あることを書いていました。まず、今の経済の仕組みが根本から間違っている。それは、富の集中を促す形に起因している。つまり、世の中の人が、「より多くのものを手に入れたい。」と願えば、他者との競争になって、それが進めば他国からも富を奪いたいと戦争も起きる。一部の人に富が集中すれば、逆の層の人たちは、ますます貧困になり、地球の環境も富のために悪化する。そのような経済の仕組みを「分かち合い」「助け合い」「おもいやり」のあるものにするんだ。と言ってます。
なんか、非現実的な空言(そらごと)のように聞こえますが、ユヌス氏は、それを実践して見せました。1970年代のバングラデッシュの女性たちは、学校にも行ったことがなく教育を受ける機会のない人たちでした。その人たちに5ドル、10ドルと言った少額の融資を行うと、多くの人たちが自分で仕事を始め、貧困層と言われる人たちの自立した生活に大きく寄与しました。それまでの銀行は、お金のある人には多くを貸すが、本当に困っている人には貸さない仕組みであった。(今でも、そして日本でもそうだと思う。)自分たちは銀行が貸さなかった人たちに無担保で少額融資を進め、今では1000万人以上になったが、既存銀行が懸念していたデフォルト(債務不履行)に陥ることはまれである。と言ってます。
へえ~そう、でも社会のためと言いながら、「自社にとってビジネスになるからやっているだけなんじゃない?」と、ちょっと穿った考えを持ってしまいますが、ヤヌス氏は、企業の目的を営利追及に置かず、ソーシャル問題解決に置く、と言ってます。つまり、投資者は投資額は回収するが、それ以上のリターンはない、それ以上の利益が出た場合は、さらに問題解決に使う。企業の優先順位は、利益ではなく、社会の問題をいかに解決するか、言わば、「世のため人のため」を唯一の企業目的とする。しかし、継続可能なビジネスでないと続かないので、その利益は必ず確保し、働いている人たちの収入や働き方は、標準以上を目指す。そして、それ以上の利益は全て、また貧困層や社会的弱者の救済、環境問題の解決に振り向けて、おのれに富が集中することを良しとしない。起業家、そして働く人の価値は、「いかに多くの人たちの幸せに寄与できたか?」に置く、と言う発想のようです。
そんな世界が可能だろうか、と思いながら、「これは何かと同じだなあ、何だったかなあ?」と記憶をたどっていくと、そうです、日本の武士道の精神と似ています。まず、西洋の騎士道にもありますが、”ノブレスオブリージュ”(2020年10月29日つけブログ参照)と言う言葉、社会に貢献することが高貴な(貴族だけでなく企業、経営者その他何かで成功した人だけでなくすべての人にも当てはまる。)人間の責務である。そして常日頃から、弱きを助け、正しいことを行う、金に執着しない、逆におのれのために金を集めることは恥であるという考え、金よりも名誉を重んじる。全部、武士道の精神と相通ずるものがあります。そう考えると、遠い南の地で武士道を実践している立派な企業に対し、尊敬と親近感をおぼえます。
確かに世界中がこんな企業だらけになり、国家も同じように他国にいかに貢献したかが評価で、他者よりも多くの富を手にすることは、決して目的ではないようになると、土地や資源を奪い合う戦争はなくなるかもしれません。もちろん、そんなに簡単なものではないと思いますが、それはまるで、黄砂や花粉でどんよりとした春空に、ほんの一服、爽やかな涼風が吹いたような感じです。世界中のあちこちで爽やかな涼風が吹けば、黄砂も花粉もどこかに飛んで行くかもしれませんね。
(あとがき)
バングラデッシュは、親日家が多い国です。それは、1971年にパキスタンより独立した時に世界中で最初に日本が承認したことによります。また、初代大統領ムジブル・ラフマンは日本にあこがれ、国旗を日の丸からデザインしたものにしました。緑に赤丸です。まだまだ貧しい国ですが、グラミン銀行などの活躍で今後大きく発展することと思います。がんばってほしいですね。