
最初に(続きを読む)をクリックしてください。
先日、NHKの「新プロジェクトX」と言う番組で、ヤミ金融事件を取り上げていました。2003年、大阪の八尾で慎ましく暮らしていた普通の夫婦が、旦那さんの交通事故から生活に困り、ヤミ金業者に1万5千円を借りたところ、利子だけで毎週1万5千円を取られ、その後もなんのかんのと脅され続け、何十万円もの金を巻き上げられた挙句、どうしようもなくなり家族3人が心中しました。ところが、当時そんな悪徳業者を厳罰にする法律がなかったそうです。(320人が逮捕されても実刑は12人しかない。)そのとき立ち上がった名もなき弁護士さんたちが、刑事事件で厳罰が無いなら、「民事で裁き、罪を償わせよう。」と立ちあがった話でした。結果的に弁護士さんたちの努力で民事裁判で勝ち、「遺族に4800万円の慰謝料を払え。」と言う当時画期的な判決を勝ち取った話でした。
さて、この話自身は全く素晴らしいことで、立ちあがった弁護士さんたちには、拍手を送りたいと思います。また、これから言うことは、この事件のことではないのですが、「画竜(がりょう)点睛(てんせい)を欠く」(素晴らしい事でも最後の詰めが無ければ、全く価値が無くなってしまう、つまり竜の絵をかいても最後に点睛、つまり目を描かなければ、完成しない、という故事。)ような事実があります。それは、弱い立場の被害者が弁護士さんたちの力も借りて裁判で勝つ、そして悪事を働いたものに損害賠償が課せられると、心から「良かったなあ。」と思うのですが、実際に日本で民事による回収、つまり払うべき側が実際に支払った割合はどのくらいか、ご存じでしょうか? 日弁連や法務省の関連データによると、なんと全額回収できた率は、10~20%程度。一部回収を含めても20~30%しかないと言われています。
こんなバカな話があるでしょうか?
払えない理由は、以下4つだそうです。①本当に資産が全くない。②資産隠し(家族名義にする。)③破産申請すると一部の支払いは免除される。④資産はあるが、払わない・・・・・・。なめとんのか!としか思えない現状です。本当にとんでもない話です。②から④は特にそうです。家も車もその他財産全てを家族名義にして、一緒にぜいたくな暮らしをしていても「払えない。」と言えば払わなくて良い。「破産申請します。」と言えば、普通に生活しながらその後の支払いが免除される。「払え。」と言われても知らん顔してれば、強制執行されるまで払わなくて良い。こんなことがまかり通っている現状について、どう思いますか?
被害を受けた、大きな痛手を被った側が何とか裁判で勝ち、被害の幾分かを取り戻そうとしたにもかかわらず、これでは泣くに泣けません。日本の法律は、どこかおかしいのではないでしょうか!まさに「画龍点睛を欠く」現状です。もっともっと国が関与して被害者の立場で援助せねばなりません。例えば、アメリカやドイツでは、国や裁判所が強制執行手続きを積極的に行い、加害者の銀行口座や給与などを差し押さえるので、迅速に賠償が行われます。また、フランスでは万が一加害者から損害賠償が取れないとなったら国が一定の補償を行い、その後国家が加害者に請求するようにします。イギリスでは、加害者が支払わない場合は制裁処置が科せられる。等々、海外の事例を見れば、やれることは山ほどありそうですが、誰もそのようなことに興味が無いのでしょう、国や自治体の動きは鈍いようです。(地方自治体では唯一、兵庫県明石市で民事裁判による損害を市が上限300万円まで立替えて、後に市が請求することを行っているようです。泉さんなかなかやるな。)
テレビのニュースなどでよく、裁判所前で「勝訴!」などと書かれた垂れ幕をもって走り出てくるのを見ますが、民事においては、勝訴したところで2~30%の履行しかないなら、「勝訴」で喜ぶわけにはいきません。「全額回収!」で初めて、戦いが終わることをよく考えないといけないですね。
何かの事件事故で苦しみ、裁判で勝ったとしても今度は相手が払わずに苦しむ、被害を受けた方は一体いつまで苦しめばよいのでしょうか!この件については、国や地方自治体が動いてくれるのを期待しています。
まあ、世の中には理不尽な事が、まだまだありますね。
(あとがき)
写真は、京都のとある場所にひっそりと安置されている幅1m以上もある特別な龍の彫り物です。年に数人しか見れない貴重なもので、見た人には幸福が訪れると言われています。もちろん、点睛(てんせい:龍の目を描くこと)もしっかり描かれて、指が五本(五本指の龍は古来中国では皇帝しか所有できなかった。)の立派な龍です。はからずも今回、この特別な龍の写真を見たブログ読者の方にも、必ず幸福が訪れることでしょう。・・・・・・と信じてがんばりましょう!
では、次回は6月10日前後に更新予定です。